薬剤師の備忘録

仕事で気になった事綴ります

BAとCBTはどちらがいいのですか?

 

 

今日はこちらの論文 PMID:28857042 

 

 

Cost and Outcome of BehaviouRal Activation (COBRA): a randomised controlled trial of behavioural activation versus cognitive-behavioural therapy for depression

(行動活性化の費用と成果(COBRA):うつ病に対する行動活性化対認知行動療法のランダム化比較試験)

 

さっそく

「jjclip RCT ワークシート」の画像検索結果

 をもちいて読んで行きましょう。

 

①ランダム化されているか?

 タイトルにありますね。→ランダム化OK

②一次アウトカムは明確か?

 primary outcome で検索→depression severity(うつ病の重症度)で明確

といいたいところですがas measured via the Patient Health Questionnaire-9; PHQ-9(患者健康アンケート-9; PHQ-9を介して測定)なんで記載が……。

スケールを使うとか言い出すと真のアウトカムじゃ無さそうな気が……

ということでPHQ-9なるものを検索してみます。

 

「PHQ-9 日本語」の画像検索結果

 

評価尺度としては妥当と判断し先に進みます。

 

③盲検化されているか?

  blindで検索→assessors blinded to treatment allocation(治療配分に盲目の査定者)

まぁそうですよね。この研究でdouble blind はありえないし…。

 

④ランダム化は最後まで保持されたか?

 intent で検索→OUTCOMEの所にWe undertook intention-to-treat (ITT) and per protocol (PP)  analyses(我々はintention-to-treat(ITT)とプロトコル(PP)分析を実施した)とあるのでOK。

 

⑤PECOは?

 

 P:Adults aged ≥ 18 years with major depressive disorder (MDD) recruited from primary care and             psychological therapy services

         (一次ケアおよび心理療法サービスから募集された大うつ病性障害(MDD)の18               歳 以上の成人)

 

 E:BA delivered by NHS junior mental health workers (MHWs)

         ( NHSの精神保健従事者(MHW)によって提供されたBA)

  

    C:CBT by NHS psychological therapists.

         (NHSの心理療法士によるCBT)

 

 O:depression severity (as measured via the Patient Health Questionnaire-9; PHQ-9) at 1                          12  months                           

   ( PHQ-9を介して測定されるようなうつ病重症度を12ヶ月で評価した)

 

ここでBAとCBTはなんぞや?と思いまして、またまたググります。

 

BA(Behavioral Activation):行動活性化療法

 

 

行動活性化療法は、文字通り「行動」を「活性化」させることで精神状態を改善させ、うつ病の改善をはかる治療法です。

うつ病の精神療法というと、認知行動療法が有名です。認知行動療法は、患者さんの認知のゆがみという「考え方」に焦点を当て、それを修正するために行動を変えていく、という方法です。

それに対し行動活性化療法は、「行動」に焦点を当て、行動を変えていくことでが精神の安定が得られるようにしていきます。

 

つまりは「ネガティブなことばかり考えるとうつ病になっちゃうから、ポジティブなことを考えよう」と「考え方」に焦点を当てるのではなく、「ネガティブなことばかり考えるとうつ病になっちゃうから、ポジティブに考えるようになる行動をしよう」という治療なのです。

 

 

CBT(Cognitive behavioral therapy):認知行動療法

認知行動療法は、私たちの認知(ものごとに対するとらえ方)を修正することで、気分や行動を変化させようという治療法になります。

同じ物事に対しても、そのとらえ方というのは人によって異なるものなのです。

認知にかたよりがあるという事は悪いことではありません。このかたよりが「性格」「個性」となり人間性の深みを作っています。みんな同じような認知を持っている世界であれば、その世界はとてもつまらないものになるでしょう。

しかし中にはこのかたよりが原因で過剰に落ち込んでしまったり、不安を感じてしまう方もいらっしゃいます。また、うつ病や不安障害などに罹患してしまうと、ものごとのとらえ方がいつもよりもネガティブになってしまうため、それが病気の悪化を加速させてしまう事もあり、これは問題となります。

認知行動療法では、まずその人が持っている「自動思考」を明確にします。

自動思考というのは、ある状況下で自動的に沸いてくる考え方のことで、「思考のクセ」のようなものです。私たちは誰もが独自の自動思考を持っており、これはある状況に遭遇した時に「自動的に」浮かんできます。

認知行動療法では、自動思考に精神的に不安定になるようなかたよりがないかを見直し、かたよりがある場合は修正を行っていきます。そして修正した認知のかたよりを実生活でも活かせるように実践をし、うまく行けばそれを続け、うまく行かなければ何がまずかったのかをまた見直していきます。

自分ひとりでは、自分を客観的に見ることが難しく、自動思考にも気づきにくいため、経験豊富な治療者と一緒に行っていくことが理想的です。

認知行動療法は、結果が出るまでにある程度の時間が必要であり、学習したり実践したりと患者さん自身にも労力が必要な治療法ですが、ものごとのとらえ方という根本を治してくれる、有益な治療法になります。